俺の彼女が一番可愛い!
料理のできる男になる
* * *

 ランチの時間も過ぎた頃に凛玖は一人で店にやってきた。

「あ、こんにちは。」
「久しぶり。あさりとエビのクリームパスタで。」

 凛玖はカウンター席に座ると、健人がパスタを作る姿をじっと眺めている。健人の今日のミッションはタメ口で話す、に決めた。

「…な、なに?」
「いや、手際いいなと思って。料理、家でもするの?」
「うん。うちのご飯は大体俺が作るよ。」
「…待て待て。もしかして、一緒に住んでるのか?」
「うん。」
「羨ましすぎるだろ…。いやまぁ、付き合ってもないんだけど…。」

 凛玖は頭を抱えている。確かに、好きな人と一緒に生活できる幸せは大きい。

「料理ってできた方がいいのかな…?」
「必要がなければあまりしないよね。バイトとかは?」
「パン屋。」
「パン屋かぁ。いい匂いがしそう。」
「すげーいい匂いだし、余ったのもらえるし、結構いいよ。割と続いてる。」
「そうなんだ。」

 意外とスムーズに会話ができている。時折深いところに刺さってきそうで少しびびってはいるものの、今のところ問題はない。

「料理って彼女のために覚えたの?」
「…いや、最初はそうじゃないけど、今はそうかもしれないかな。」
「どういうこと?」
「最初は一人暮らしが必須だったから、自分で料理しなきゃって思ってやってて、このバイトも始めたから、普通に覚えていったけど、今は…。」

『いただきます』『これおいしい!』『いつもありがとね』『ごちそうさまでした』

 生活の中の言葉たちを思い出して、健人は口を開く。

「おいしいとか、ありがとうとか、そういうの言ってほしくて頑張ってるところもあるかな。」
「…なるほどなぁ…。大事にしてるんだな、彼女さんのこと。」
「そうだね。すごく大事だよ。そして、出来上がり。」

 湯気のたつ皿を、そっと目の前に出す。
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