俺の彼女が一番可愛い！

「ふーん…。でも一応聞きたい。」
「…じゃあ、バイト終わってからでもいい？もう少しで終わるから。」
「この近くってなんかあったっけ？」
「大学の学食？」
「…今食べたばっかだけど。」
「あ、じゃあ岡田さんのパン屋さん！どこ？」
「駅前の…。」
「あぁ、わかる！たまに綾乃ちゃんが買ってきてくれるところだ。」
「綾乃ちゃん？」

　健人は思わず「あ」と声を出した。さらりと出てしまった、大好きな人の名前。

「…彼女さんな。じゃあパン屋にいるよ、サービスしてもらお。店内で食べれるから、終わったら来て。」
「うん。」

　実は一度も入ったことのないパン屋ではあったが、綾乃が買ってきたパンを食べている限りではとても美味しくて、今度こそは自分が行きたいと思っている場所でもあった。
　手際よく片付けを済ませ、仕込みも一応していく。足取りは、少し軽い。

「お先に失礼します！」
「綾乃ちゃんとデートかい？」
「な、何言ってんの！綾乃ちゃんは仕事の時間だよ。」
「そうだったな、何か楽しそうだから。さっきのお客さん？」
「うん。」
「楽しんでおいで。」

　オーナーの言葉に少しこそばゆくなる。いつまでたっても、多分オーナーからみたら子供なのだろう。

　駅まではあっという間だ。入ってすぐのイートインのコーナーに座る凛玖を見つけた。

「待たせてごめんね。」
「おーバイト、お疲れ。結構うまいから、適当に選んでこいよー。」
「うん。」

　バイト後ということもあってお腹はペコペコだ。小さなフランスパンとクロワッサン、チーズフォンデュにキャラメルマキアートをチョイスした。