いつか、きみの空を。
わたしが掴んだ腕を振り払いはしないけれど、身体を強ばらせるから、すぐに離すと慶はまた一歩距離を置いた。
「葵衣が機嫌悪くするんだ」
「どういうこと?」
「……知らない。双子だからだろ」
小学生のときはいつも四人でいたわたし達が、男女で分かれて過ごす時間を持つようになったのは中学生になってからのことだ。
わたしが日菜とふたりで過ごす時間と同じくらい、葵衣には慶と過ごした時間がある。
慶がわからない理由を、わたしが知っているはずがない。
葵衣の口から出た『 双子 』の二文字には過敏に反応するくせに、慶の言う『 双子 』の言葉は自然と受け入れることが出来た。
そこで初めて、気が付く。
葵衣と双子であることに囚われているのは、わたしの方なのかもしれないということに。
「俺ら、なんか遠くなったよな」
逃げ腰だったくせに、ぴんと背筋を伸ばして、空を見遣る慶がぼそりと零す。
わたしがひとつ頷いて見せると、葵衣と同じくらいの大きさの手を恐る恐る伸ばしてきて、髪を雑に撫でられた。
「葵衣はさ、大事な妹が俺みたいなのにとられないか心配なんだよ、きっと」
「……慶はかっこいいよ」
「花奏がデレるのめっちゃレア! でもなあ、俺は心に決めた人がいるんだ、ごめんな」
「ねえ、なんでわたしがフラれたみたいになってるの?」
「俺が告られたみたいに聞こえたから」
ぎこちないけれど痛くない程度に撫でていた髪を掻き回すようにしだすから、容赦なく慶の手の甲を掴んで竹箆を食らわす。
いてえ、と言いながらもにへらと笑う慶の頭を、今度はわたしが思い切り撫でた。