いつか、きみの空を。
ふたりで食事をするとき、葵衣は斜め前に座るけれど、友紀さんは必ずわたしの隣に座る。
テレビ画面が正面に見えるからという理由の他に、隣にいる人の声が一番近くに聞こえるから、らしい。
「やっぱり苦いよねえ……ごめんね、残していいよ」
「ううん、美味しいよ。ソースの力はすごい」
「そうっすか!ソースまで失敗しちゃったら私もキッチン使用禁止令が出ちゃうかもしれないもんね」
「……そうっすか、には反応した方がいい?」
「スルーしてくれるとありがたいかな」
友紀さんがボケてわたしがツッコミを入れる、この家ではいつもの光景。
こんな日々がずっと続けばいい。
あと二年、葵衣との間に何も変化が起こりませんように、という願いを込めて、目を閉じた。