雨の後は、きっと虹がかかる


「生物」と書かれている棚で曲がり、資料を探した。


棚越しに誰かがいるけれど、同じクラスの人だったらいろいろと厄介だから無視していた。


上から順に棚に目を滑らせていくと、目当ての本が見つかり二冊ほど抜き取った。


これでレポートが書ける。


席に戻ろうとしたその時、本と本が擦れる音と共にすすり泣く声がした。


小さな音だったから気のせいかもしれないと思い、気にしないことにした。


何気なく棚の方に目線を向けると、上村さんが泣いていた。


すすり泣きではあったけれど、人目を気にせずに泣いていた。


思わず立ち止まって見てしまった。


上村さんが泣くなんて、考えられなかったから。


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