雨の後は、きっと虹がかかる
声を掛けようかとも思った。
でも、私が声を掛けたところで次に会った時、口封じのためとか何とか言われて暴力を振るわれるのはいやだ。
だから見なかったことにして通り過ぎようとした。
「何見てんだよ」
聞いたこともないような低い声で呼び止められた。
何も考えられないくらいに思考が止まった。
それほどまでに、上村さんが本気で怒っている事が伝わってきた。
「いい気になんなよ」
見なければいいと思うのに、気になって見てしまう。
首を右にまわして見ると、泣いて充血していることも手伝った、恐ろしい目をしているのがわかってしまった。
思わず息を呑んだ。
「死ねよ」
怖くなって、その場から無言で立ち去った。