無愛想な仮面の下
 喜びを分かち合う雰囲気など皆無で佐久間さんは立ち上がった。
 ただ気まぐれに仕事のことだったから話してくれただけ。

 それでもやっぱり……優しい人なのかもしれない。

 少し寂しい気がして思わず心の声を漏らした。

「佐久間さんは嫌そうでしたけど。
 私は閉じ込められてどちらかと言えばラッキーというか……。
 だって佐久間さんとお近付きになれましたから。」

 私の言うことなんて興味なさそうに気怠げに私の横を通り過ぎる…はずだった。

 急に手を引かれ驚く間も無く引き寄せられた。

「女が嫌いでも欲情しないわけじゃない。」

 言葉の意味を理解するより早く唇が重ねられた。

 嘘…………。

 強引に、けれど優しく重ねられた唇に思考は停止しそうになる。

 甘い吐息を漏らした体はゆっくりと離された。

「悪い。魔が差した。」

 それだけ言った彼は資料室の闇へと消えていった。

 呆然とその見えなくなった後ろ姿を眺め続けた。

 今の何?
 魔が差したって…何が?

 混乱する頭の中の質問に答えはもらえなかった。









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