無愛想な仮面の下
「またモジャに負けたー。
 今回こそは行けると思ったのに。」

 我が社はコンビニデザートの企画、開発をしている。

 今は『夏に向けて』をコンセプトにした爽やかなデザートの企画を打ち出す為に企画書を練って練って練って……。
 やっと上司のOKが出たのに、社内コンペで惨敗。

 その相手が佐久間悠斗。モジャ仙人。

「あのモジャ毛を全部引っこ抜いてやりたい!!」

「ハハッ。それ、私も見てみたいわ。」

 沙羅は笑っているけど、ちゃっかり自分の企画書は通してる。
 食欲のない夏にご飯にもなるデザートって私も買いたくなる。さすがだよ。

 ライバルにもなれなくて悔しいけど沙羅は同じ企画部だからまだいい。

 モジャは違う。
 新しいデザートを試作したり開発する部署の所属なのに、だ。

 会社はどんな部署からの提案も柔軟に対応するって言っているけど、他部署に企画を取られたら企画部の立場がない。

 勝利の美酒のはずがヤケ酒なんてやってられない。

 力任せに置いたビールジョッキのテーブルをたたく鈍い音は周りの騒がしい酔っ払いの声や威勢のいい店員さんの声にかき消される。

「次、頑張りなよ。
 由莉の企画、私は好きだよ。」

「ありがと〜。持つべきものは友だー。」








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