無愛想な仮面の下
 何度か試作室に通って納得のいく物が出来た。
 後は社内コンペで審査してもらうだけだ。

 実際に企画したデザートを形にして出せることは佐久間さんの強みだろう。
 いくらいい企画でも本物を見て食べられた方が分かりやすい。

 もちろん考えたデザート自体に自信がなければ出来ないことだけれど。

 次の企画があった時にどうすれば佐久間さんに勝てるか。
 そんなことを考えながら歩いていると給湯室から女の子たちの噂話が聞こえてきた。

「社長の息子なんでしょ?」

「嘘。そうなの?」

「だから佐久間さんの企画はすぐ通るのね。」

 え……佐久間さん?
 佐久間さんが社長の、息子?

 だから企画が?
 そんな……。

 そんなはずない。そんな…………。

 そう思うのに、そこからどうやって仕事をしたのか記憶になかった。






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