無愛想な仮面の下
12.俺のマンションに
 鰻を食べた帰り道、のんびりしてしまったせいでお昼休みはギリギリだ。
 急いで帰っているのに佐久間さんは突拍子もないことを口にした。

「今日、俺のマンションに来ないか?」

「……どうしてですか。」

「どうしてって、なぁ。」

 理解できないお誘いに後退りする。
 この人、見た目が変わったら中身もたらしになっちゃうわけ?

「私、お付き合いしてる方じゃない男性の家に行くほど軽くないですから。」

「お付き合い……ねぇ。」

 そこから黙ってしまった佐久間さんに何故だか傷ついた。

 雨を落としそうだった空は私の晴れ女パワーのお陰かなんとか持ち堪えてくれた。
 そんな曇り空を見つめて佐久間さんは何も言わなかった。


 なんて言われれば満足だったのか。
 佐久間さんと別れてからも1人物思いにふける。

 付き合おうって言われたかった?
 まさか。まだ私は恋人に振られたばかりの傷心で………。

 本当は恋人に振られたことなんて頭の片隅にも残っていなかった。
 色んなことがあり過ぎて失恋に浸れなかったせいだ。

 きっとそうだ。
 そう自分に言い聞かせた。








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