無愛想な仮面の下
「馬鹿野郎!
 あんた何考えてるんだ!」

 聞き覚えのある声に目を開ける。
 階段の踊り場で、前にもなった状況に陥っていた。

 体は痛くない。
 私の体は佐久間さんの腕の中に収まっていた。

 そして、よく言われる『あんた』は私のことではないようで………。

「腕が当たったただけです。」

 悪びれる様子のない女性は足早に去っていった。

 前と同じような状況だけれど、前とは明らかに違う。
 腰が抜けて力が入らない。
 手もカタカタと震えている。

「大丈夫か?
 イテテ……。俺も腰を打った。」

 腰を押さえた佐久間さんが立ち上がり、手を差し出された。
 その手に自分のを重ねて、立ち上がらせてもらった。

「医務室に行こう。」

 守ってくれた大きな背中を見つめながらついていく。
 見つめながらそれを頼もしいと思った。








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