無愛想な仮面の下
「なんともないようだけど、少し休んでいっていいわよ。」

 医務室の先生に言われ、ベッドを借りることにした。
 佐久間さんは腰に湿布を貼ってもらい、私が横になったベッドの傍らの椅子に腰を下ろした。

「悪かった。変なことに巻き込んで。」

 こんななりしてると、って前に言っていた。
 けれど本当にたまたま腕が当たっただけなのかもしれない。

「大丈夫です。
 私がぼんやりしてたのがいけないんで。」

 努めて明るく話した。

 この騒動が自分のせいと思っているのなら、それって……。

「その髪は……私が髪、切ってきてくださいって言ったから……ですよね?」

 手を伸ばして髪に触れようとしたその手に触れるように頭を下げてくれた。
 サラサラとした髪はあのモジャ毛だったなんて嘘みたいだ。

「あんたに言われたのはキッカケで、もう馬鹿らしくなってたんだ。」

 頭を上げた佐久間さんはベッドから見える窓の外を眺めた。
 つられて私も窓の外に目をやると鳥が2羽飛んできていた。

「自分を偽るのも潮時かと思って。」

 窓から視線を移した佐久間さんは真っ直ぐに私を見据えた。
 真剣な眼差しに鼓動が嫌でも速くなる。

「少し寝たらいい。」

 そう言われ、素直に目を閉じた。
 色々あり過ぎて正直眠りたかった。








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