無愛想な仮面の下
「俺、没頭すると風呂とか身なりが後回しになるんだよな。」

 ヨッと。掛け声をかけて縁石ブロックから降りた佐久間さんは私を覗き込んで付け加えた。

「ガッカリしたろ。」

 確かに、そんな理由?というのが率直な感想だけど………。

 自然に繋がれたままの手は佐久間さんの手の中に収まっている。

「だって、守やさ……。」

 守谷さんから佐久間さんの話を聞いたなんて言わない方がいいのかな。
 途中まで名前を出してしまってもう手遅れなんけれど。

 不機嫌になるかと思いきや、そうではないみたいだ。

「守谷がどうせ俺のこと哀れな男だって言ったんだろ?
 ほだされて馬鹿な奴。」

「ほだされてなんかいません!」

 守谷さんにからかわれただけだったの?
 でも、だって………。

「でも……佐久間さんだって自分で偽ってたって。」

「まぁ、没頭して身なりを構わないって言っても行き過ぎたきらいがあるよな。」

 目をそらした佐久間さんに没頭し過ぎるからというだけじゃない何かがあるんだと思わざるを得ない雰囲気を感じた。

「じゃやっぱり………。」





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