イケメン悪魔とツンデレ美女、ひとつ屋根の下で


その日の夜、寝る前に洗面所で歯磨きをして、口をゆすぎ終わったあと部屋に入ろうとしたら、暁の部屋の扉がちょうど開いて、中から大きな荷物を持った暁が出てきた。


パチリッと目が合う。


こうして目が合えば、サッと反らして部屋に逃げ込むほどは、避けていない。


だけど、いつもなら「その荷物なに?」と自分から話しかける。


だけど今は、ここ数日あまり話していないせいでうまく言葉が出てこなった。


「土日、遠征」


暁はそれだけ言って玄関のそばに荷物を置きに行った。


「そ、そうなんだ」


わたしもそれだけ返して、自分の部屋へと入った。


土日遠征は、月に1回あるみたい。


4月にもあった。


あのときは、どこに遠征なの?何時ごろ帰ってくるの?がんばってね!って言ってたのに......今は素直に言えない。


自分が勝手に避けてるくせに、なんだかさみしい気持ちが胸に生まれた。


ベッドにしずむ。


キシッとスプリングが音をたてた。


「...」


...おやすみくらい、言えばよかった。


わたし、自分が思っているよりも、寂しがりやなのかもしれない。


灯りを消して、目を閉じると、案外すぐに眠りについた。

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