イケメン悪魔とツンデレ美女、ひとつ屋根の下で
夕くんは少しの間ののち、
「彩、頭上げて。あのときは、ほかに好きな人ができたんだから、仕方ないでしょ」
と落ち着いた口調で言った。
わたしはあのとき、別れたい理由を他に好きな人ができたと言ったのだ。
胸が更にきつく痛いほどに締め付けられた。
わたしは、嘘までついて...。
ずっと騙していたんだ...。
「っちがうの、ほんとは...!」
ほんとの理由はちがう。
わたしは夕くんの気持ちなんて考えないで、自分のことだけを考えて、この上ないほど最低な理由でーー
「...言わなくていいよ、分かってるから」
その言葉に、勇気を出して夕くんを見ると、そこにあったのはものすごく穏やかな表情だった。
「...え?」
分かっ...てる?
「なんとなく予想はついてるよ。
でも、もう気にしてない。
それにあのとき、引き止めなかったのは自分だから」
そう、言い切った。
「ゆう、く...」
そんな、自分がわるいみたいに言わないで...。
悪いのはわたしなのに。
「どうしてそんな...許してくれるの...?」
わたしは、もっと責められていいはずなのに......。