イケメン悪魔とツンデレ美女、ひとつ屋根の下で


夕くんは少しの間ののち、


「彩、頭上げて。あのときは、ほかに好きな人ができたんだから、仕方ないでしょ」

と落ち着いた口調で言った。


わたしはあのとき、別れたい理由を他に好きな人ができたと言ったのだ。


胸が更にきつく痛いほどに締め付けられた。


わたしは、嘘までついて...。


ずっと騙していたんだ...。


「っちがうの、ほんとは...!」


ほんとの理由はちがう。


わたしは夕くんの気持ちなんて考えないで、自分のことだけを考えて、この上ないほど最低な理由でーー


「...言わなくていいよ、分かってるから」


その言葉に、勇気を出して夕くんを見ると、そこにあったのはものすごく穏やかな表情だった。


「...え?」


分かっ...てる?


「なんとなく予想はついてるよ。

でも、もう気にしてない。

それにあのとき、引き止めなかったのは自分だから」


そう、言い切った。


「ゆう、く...」


そんな、自分がわるいみたいに言わないで...。


悪いのはわたしなのに。


「どうしてそんな...許してくれるの...?」


わたしは、もっと責められていいはずなのに......。
< 170 / 198 >

この作品をシェア

pagetop