イケメン悪魔とツンデレ美女、ひとつ屋根の下で
50メートルのところでーー
夕くんが暁を抜かした。
暁が負けている。
素人のわたしが見ても、ふたりともめちゃくちゃ綺麗なフォームだ。
だけど...今の暁のフォームは、なんだか崩れている気がする。
マラソン大会の練習のときに、暁のフォームをずっと見ていたからこそ、わかった。
右足が......なんかおかしい。
もしかして、痛めてる?
でも、昨日までも今日の朝もそんな様子なかったはず...、
まさか......
今朝、わたしを抱きとめて床に倒れ込んだとき、右足をひねった......?
そうかはわからない。
だけど、暁がわざと遅くするわけがないし、わたしの知っている暁は、もっとこう、風のようにーー
「っ暁......!!
頑張って...!負けないで、暁......!!」
わたしは気づいたらそう叫んでいた。
心から出た言葉だった。
暁に届いてほしかった。
この広いグラウンドで、わたしの言葉が暁の耳に聞こえたかはわからない。
だけどまるでほんとに願いが通じたみたいにーー
暁は夕くんを追い抜いて、ゴールしたーー...!