イケメン悪魔とツンデレ美女、ひとつ屋根の下で


「...今勝ったんだから、いいだろ」


少し間を置いて、そう言い切った。


結果的には、そうかもしれないけれど...


「ぬ、抜かされてたじゃん」


全然、余裕ではなかった。


危ないところだった。


「それは朝のお前のせい」


言いながら、右足を手のひらで軽くたたいた。


やっぱりあのとき、右足をひねっていたんだ...。


勘違いではなかったんだ。


「そ、それはごめん...」


申し訳ない...わたし、暁の邪魔ばっかりしてるよ...。


「つーかお前、なにずっとうつむいてんだよーー」


ずっと地面に向かって話すわたしに、暁はいらついたように言って、わたしの顎のあたりに手を伸ばし、自分のほうへと向かせたーー


「っ!?ッや...だ!見ないでーー」


暁の真っ黒い瞳と真っ直ぐに視線が交わった。


そうしたらもう、逃れられなくなる。


暁から。


そして、自分の気持ちからーー。


こんな...

バレバレな表情、見られたくない。


だって、今のわたし、顔に書いてあるもん。


わたしは、暁のことがーー。


「...すげー顔赤いけど」


「う、るさい!黙って...っ」


ばれてしまったから、もう隠しても無駄だ。


わたしは夕くんと別れたあの日から、

もう恋なんてしたくないと思ってた。


夕くんを傷つけたわたしは、新しい恋をする資格なんてないと自分の気持ちを塞いでた。


だけど、ほんとはずっと、暁に惹かれてた。


夕くんの笑顔を二度と壊したくないと思った。


...だけど、わたしが自分自身で笑顔にさせたいと思うのは...

夕くんではなく、暁だーー。

< 188 / 198 >

この作品をシェア

pagetop