イケメン悪魔とツンデレ美女、ひとつ屋根の下で
「...今勝ったんだから、いいだろ」
少し間を置いて、そう言い切った。
結果的には、そうかもしれないけれど...
「ぬ、抜かされてたじゃん」
全然、余裕ではなかった。
危ないところだった。
「それは朝のお前のせい」
言いながら、右足を手のひらで軽くたたいた。
やっぱりあのとき、右足をひねっていたんだ...。
勘違いではなかったんだ。
「そ、それはごめん...」
申し訳ない...わたし、暁の邪魔ばっかりしてるよ...。
「つーかお前、なにずっとうつむいてんだよーー」
ずっと地面に向かって話すわたしに、暁はいらついたように言って、わたしの顎のあたりに手を伸ばし、自分のほうへと向かせたーー
「っ!?ッや...だ!見ないでーー」
暁の真っ黒い瞳と真っ直ぐに視線が交わった。
そうしたらもう、逃れられなくなる。
暁から。
そして、自分の気持ちからーー。
こんな...
バレバレな表情、見られたくない。
だって、今のわたし、顔に書いてあるもん。
わたしは、暁のことがーー。
「...すげー顔赤いけど」
「う、るさい!黙って...っ」
ばれてしまったから、もう隠しても無駄だ。
わたしは夕くんと別れたあの日から、
もう恋なんてしたくないと思ってた。
夕くんを傷つけたわたしは、新しい恋をする資格なんてないと自分の気持ちを塞いでた。
だけど、ほんとはずっと、暁に惹かれてた。
夕くんの笑顔を二度と壊したくないと思った。
...だけど、わたしが自分自身で笑顔にさせたいと思うのは...
夕くんではなく、暁だーー。