イケメン悪魔とツンデレ美女、ひとつ屋根の下で


でも、こんなところでしゃがみこんでいる場合ではなくて。


そうだ、暁に遅くなるって電話しないと...。


そう思ってポケットから携帯電話を取り出したそのとき。


~♪~♪


ちょうど、着信が鳴り響いた。


着信者はまさに今かけようとした相手、暁で。


『迷子だろ』


通話中にして、耳に届くその第一声にカチンと来るけれど、今はその怒りさえ一瞬で消えてしまう。


『どこほっつき歩いてんだよ』


「......」


『...おい、彩?』


「...動けない...」


弱々しい声しか出せなくて。


『は?』


「今から帰るけど、たぶん20時すぎると思う...」


ゆっくり歩いていたらそれくらいになるだろう。


『今、どこだよ』


暁の落ち着いた声が耳に注がれる。


「県図書館の近く...、暁は先にご飯食べてて...」


『そこから動くな』

ピッ


その言葉とともに電話はプツリと切れた。


プーップーッという機械音とともに、わたしの頭にはハテナマークが浮かびあがる。

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