イケメン悪魔とツンデレ美女、ひとつ屋根の下で
民家から抜けて、川沿いへとやってきた。
でも今、わたしの耳には、鳥が鳴く声も、川に水が流れる音も聞こえない。
自分の世界のなかにいる。
残り、一キロ。
この一キロが、わたしにとっては踏ん張りどころ。
一番苦手なラストスパートだ。
「...っ」
足が、もつれてしまいそう...!
一人に抜かされていく......。
これまで何度か抜いたり抜かされたりしていって、今自分が何位にいるかなんてまったく検討がつかない。
「っは、...はっ」
また一人に抜かされてしまい、焦りがわたしを襲ってくる。
なんで思うように動かないの、わたしの足...!!
あんなに一ヶ月間練習したのに...っ!!
自分が嫌になり頭がごちゃごちゃになる。
もうだめかもーー
「ーーおい、彩ッ!」
っえ...?
辺りの音なんてまったく聞こえてこなかったのに、
たしかにわたしの名を呼ぶその声だけは、はっきりとわたしの耳に一直線に届いた。