イケメン悪魔とツンデレ美女、ひとつ屋根の下で
「暁はどうしてあの川の反対側にいたの?」
わたしの質問に、暁は「俺の高校もマラソン大会だったから」とさらりと答えた。
「いやいやそんなことは知ってるよ。でも、暁があそこに一人でいるっておかし...」
って、まさか。
「まさか、暁、あのときマラソン中だったの?」
「あぁ」
そんなふうにまたまたさらりと返事する暁は、間違いなく怪物だ。
だって、あのときあそこには暁一人しかいなかった。
ということは、大きく2位以下を引き剥がして、暁はぶっちぎりであの川沿いを走っていたということになる。
「暁って悪魔じゃなくて化け物だったんだ」
「はあ?」
わたしはふうーっと大きく息をはいて。
「...もう終わったことは仕方ない!!!だってやることはやったんだもん!!!この一ヶ月間頑張った自分を褒める!!!」
10位以内は叶わなくて、リトスタにも会えないけど、悔いはない!!!
「切り替えは大事だな」
「暁、いろんなことたくさん教えてくれて、ありがとね!」
もしはじめから暁がいなかったら、きっと50位にも入れなかったかもしれない。
そう思うとぞっとする。
自分の部屋に入ろうとするわたしを、暁は「彩」とひき止めて。
「20日、な。覚えとく」
それだけ言ってバタンと自分の部屋へと入っていった。
「え...っ?」
言葉をもらし、その口は開いたままになる。
ゆ、遊園地、行ってくれるの...?
ライブ、一緒に行ってくれるの...?
そ、そういうことだよね...!?
「やったあ...!!」
暁は化け物ではなく、優しい心を持った悪魔だった。