わすれなぐさ
春、そして出逢い
始まりは唐突に
.
全教科の中で、理科は二番目に嫌いだ。ワースト2。たまにはがんばろう、と意気込んでも、一度止まってしまえば、訳の分からない単語や用語に押し潰されそうになって、瞼を閉じてしまう。
けれど今日は理科室での実験授業で、いつものように寝る訳には行かなかった。実験くらいはやっておかないと、さすがにまずい気がするし。
回ってきたプリントに名前を書いて、シャーペンを乱雑に筆箱へ入れる。すると何がどうなったのか、飛び出した消しゴムが机の下へ、そして向かい側へと転がってしまった。小さく溜め息を吐く。
「溜め息吐いたら幸せ逃げるよ」
突然頭上から聞こえた声に、私は顔を上げた。
カッコいい、と素直に思った。優しそうだ、とも。
差し出された手には、私の消しゴムちゃん。
「ありがと」
それだけ言って、浮け取ったそれを今度は丁寧に筆箱にしまった。
「眠くね?」
唐突な問いかけに、思わず数秒固まる私。はっとして「そうだね」と返せば、目の前で彼はあくびをしながらだるいよね、と一言。
「お前、毎日遅刻してるだろ」
「え、なんで知ってんの」
「俺も時々してるから」
「ダメじゃん」
消しゴムを拾ってくれただけだ。本当にそれだけ。だからまさか、そこから日常会話に発展するとは思っていなかった。それも、初めて話す相手と。
彼の名前は、高月旭陽。後に知ったその名前は、太陽のように笑う彼に、似合い過ぎていると思った。
全教科の中で、理科は二番目に嫌いだ。ワースト2。たまにはがんばろう、と意気込んでも、一度止まってしまえば、訳の分からない単語や用語に押し潰されそうになって、瞼を閉じてしまう。
けれど今日は理科室での実験授業で、いつものように寝る訳には行かなかった。実験くらいはやっておかないと、さすがにまずい気がするし。
回ってきたプリントに名前を書いて、シャーペンを乱雑に筆箱へ入れる。すると何がどうなったのか、飛び出した消しゴムが机の下へ、そして向かい側へと転がってしまった。小さく溜め息を吐く。
「溜め息吐いたら幸せ逃げるよ」
突然頭上から聞こえた声に、私は顔を上げた。
カッコいい、と素直に思った。優しそうだ、とも。
差し出された手には、私の消しゴムちゃん。
「ありがと」
それだけ言って、浮け取ったそれを今度は丁寧に筆箱にしまった。
「眠くね?」
唐突な問いかけに、思わず数秒固まる私。はっとして「そうだね」と返せば、目の前で彼はあくびをしながらだるいよね、と一言。
「お前、毎日遅刻してるだろ」
「え、なんで知ってんの」
「俺も時々してるから」
「ダメじゃん」
消しゴムを拾ってくれただけだ。本当にそれだけ。だからまさか、そこから日常会話に発展するとは思っていなかった。それも、初めて話す相手と。
彼の名前は、高月旭陽。後に知ったその名前は、太陽のように笑う彼に、似合い過ぎていると思った。