女探偵アマネの事件簿(下)
解決と新たな謎
フランツと別れたウィルは、アマネとの待ち合わせ場所に向かう。
待ち合わせ場所はホワイト・チャペル地区にある本屋だ。
日がだいぶ傾いてきて、もうすぐ夕方になるだろう。
(アマネは先に着いてるよな?)
彼女は、人との約束を忘れたり、破ることはしない。なので、几帳面という程ではないが、待ち合わせの時は大体先に着いている。
(しかし、あの女の人の探し相手がフランツか。……待てよ)
ウィルはふと足を止める。
アマネが、女性から敵意のようなものを感じたと言っていたのを思い出す。
もしも、彼女が探している相手がフランツ(仮の姿)だったら、アマネが彼女に恨まれたり、敵意を向けられたりする理由に、一つの仮説が浮かぶ。
(……女の人は、アマネに嫉妬してる?)
もしそうならば、彼女はフランツとアマネが何かしらの関係深い間にあると思い込んでる可能性が高い。
そう思わせる何かを見たとしたら?
(俺が、アマネをフランツが抱き締めてたところを見て、イライラしたりフランツに、敵意程ではないけど、狡いとか悔しいとか、そう言うのを感じた)
それが嫉妬と言う感情ならば、彼女もフランツがアマネを抱き締めていたところを見ていたのだ。
そして、当然嫉妬の矛先はアマネに向く。
(思い込みの激しい彼女は、多分嫉妬深い傾向にある。でも、何でわざわざアマネに依頼したんだ?)
協力なんて求めてる訳ではないだろう。だとしたら、フランツを探すために、アマネを利用した可能性が高い。
彼女はアマネがフランツと関わりがあることを知っていて、依頼をしたのだ。
(……アマネ程の自信はないが、もしこの仮説が当たっていたら……何か、ヤバい気がするな)
ああいうタイプは、何をしでかすか分からないと、自分より人間を観察してきたアマネが言っていた。
人からの言葉は受け入れられず、自分が正しいと信じてやまない。
そういう相手に、果たしてこちらの考えている常識は通じるだろうか?
(急いで待ち合わせ場所に向かうか!)
ウィルは走って本屋へ急ぐ。出来れば気のせいであってほしいという思いを胸に。
(……怖い……ごめんなさい)
何日も閉じ込められ、罵られ失望され、それでも何時かはと希望を抱いていた。
けれども、そのいつかなど永遠に来なかった。
『どうして貴女は女なの?どうして男に生まれなかったの?貴女が男だったら良かったのに』
女の人の声が、耳にまとわりつく。まるで、すぐ側で囁かれているようだ。
『姉上。何があっても僕は姉上の味方ですよ。だから、姉上も僕の味方でいてくださいね?』
『要らない。姉上なんて要らないです』
幼い子供の声が、少しずつ低く変わる。
『姉上。貴女は何でも覚えてしまえるんでしょう?でしたら覚えていてください。貴女のせいで死ぬ弟の顔を』
(……私が、生まれてこなければ。私が男だったなら……)
生まれてきたことが罪。女であることが罪。弟よりも、男よりも優れているのが罪。
(生まれたことが罪ならば、私は生きていてはいけなかった……でも、生きたかった……)
暗闇に閉ざされた部屋の中で、アマネの意識が朦朧とする。
闇がすべてを飲み込む。自分が溶けて消えてしまう。
(……助けて……)
誰でもいい。そう思いながら、何故かウィルの顔が浮かんだ。
待ち合わせ場所はホワイト・チャペル地区にある本屋だ。
日がだいぶ傾いてきて、もうすぐ夕方になるだろう。
(アマネは先に着いてるよな?)
彼女は、人との約束を忘れたり、破ることはしない。なので、几帳面という程ではないが、待ち合わせの時は大体先に着いている。
(しかし、あの女の人の探し相手がフランツか。……待てよ)
ウィルはふと足を止める。
アマネが、女性から敵意のようなものを感じたと言っていたのを思い出す。
もしも、彼女が探している相手がフランツ(仮の姿)だったら、アマネが彼女に恨まれたり、敵意を向けられたりする理由に、一つの仮説が浮かぶ。
(……女の人は、アマネに嫉妬してる?)
もしそうならば、彼女はフランツとアマネが何かしらの関係深い間にあると思い込んでる可能性が高い。
そう思わせる何かを見たとしたら?
(俺が、アマネをフランツが抱き締めてたところを見て、イライラしたりフランツに、敵意程ではないけど、狡いとか悔しいとか、そう言うのを感じた)
それが嫉妬と言う感情ならば、彼女もフランツがアマネを抱き締めていたところを見ていたのだ。
そして、当然嫉妬の矛先はアマネに向く。
(思い込みの激しい彼女は、多分嫉妬深い傾向にある。でも、何でわざわざアマネに依頼したんだ?)
協力なんて求めてる訳ではないだろう。だとしたら、フランツを探すために、アマネを利用した可能性が高い。
彼女はアマネがフランツと関わりがあることを知っていて、依頼をしたのだ。
(……アマネ程の自信はないが、もしこの仮説が当たっていたら……何か、ヤバい気がするな)
ああいうタイプは、何をしでかすか分からないと、自分より人間を観察してきたアマネが言っていた。
人からの言葉は受け入れられず、自分が正しいと信じてやまない。
そういう相手に、果たしてこちらの考えている常識は通じるだろうか?
(急いで待ち合わせ場所に向かうか!)
ウィルは走って本屋へ急ぐ。出来れば気のせいであってほしいという思いを胸に。
(……怖い……ごめんなさい)
何日も閉じ込められ、罵られ失望され、それでも何時かはと希望を抱いていた。
けれども、そのいつかなど永遠に来なかった。
『どうして貴女は女なの?どうして男に生まれなかったの?貴女が男だったら良かったのに』
女の人の声が、耳にまとわりつく。まるで、すぐ側で囁かれているようだ。
『姉上。何があっても僕は姉上の味方ですよ。だから、姉上も僕の味方でいてくださいね?』
『要らない。姉上なんて要らないです』
幼い子供の声が、少しずつ低く変わる。
『姉上。貴女は何でも覚えてしまえるんでしょう?でしたら覚えていてください。貴女のせいで死ぬ弟の顔を』
(……私が、生まれてこなければ。私が男だったなら……)
生まれてきたことが罪。女であることが罪。弟よりも、男よりも優れているのが罪。
(生まれたことが罪ならば、私は生きていてはいけなかった……でも、生きたかった……)
暗闇に閉ざされた部屋の中で、アマネの意識が朦朧とする。
闇がすべてを飲み込む。自分が溶けて消えてしまう。
(……助けて……)
誰でもいい。そう思いながら、何故かウィルの顔が浮かんだ。