女探偵アマネの事件簿(下)
アマネがフランツに助けられる数時間前のこと。
「……アマネに、何かあったのか?」
待ち合わせ場所にアマネの姿はなく、ウィルはホワイト・チャペル地区の表通りに戻って、アマネの情報を集めていた。
だが、アマネを見かけたという人物はいなかったため、途方にくれた。
そんな時、フランツがまた目の前に降ってきた。
「やぁ!」
「……帰れ」
「それは無いんじゃないかな?何か困っているんだろう?例えば……ミス・アマネのこととか」
完全に見破られ、ウィルは苦虫を噛み潰したような顔をする。だが、アマネが優先のため、ウィルはフランツに協力を頼むことにした。
「お前、宝探しは得意だよな?」
「まぁね」
「じゃ、アマネの居場所。探れるか?」
ウィルは、何となくアマネに何かあったと思った。
「うん、結構自信あるよ。探し物は好きだから」
「……本当は嫌だし、腹立つけど、俺の代わりにアマネを見つけてやってくれないか?」
「いいよ。その代わり、君も君で動いてくれるかな?」
フランツは、出来るだけ長く女性を足止めしてから、あることを言って、アマネの所に行かせろと言った。
その前に警察に連絡をいれ、女性を尾行してもらう必要があったため、先に警部に話をしに行ったが。
(ホントは、俺が真っ先にお前を助けに行きたかった)
けれども、こういうことは怪盗である彼が適任なのは事実だ。
ウィルは女性の住所が書いてある紙を見ながら、女性の家へと走っていく。
家に着くと明かりはなく、そこらじゅうから腐った生ゴミのような匂いがした。
貧民街にいた時、散々嗅いだ匂いと同じで、ウィルは顔をしかめる。
無人のようにも感じるが、人の気配はした。
ウィルはドアをノックする。
暫くすると、この家には不似合いなほど上等のドレスを着た依頼人の女性が出てきた。
「あら?貴方は……」
「探偵の助手です。……あの、アマネと会いませんでしたか?」
「……いいえ」
口元に笑みを浮かべる女性に、ウィルは内心嘘だと思った。
「探偵さんがどうかなさったの?」
「……いえ!ああ、貴方が探してる男性のことで、もう少し聞きたいことがありまして」
ウィルはとっさに愛想笑いを浮かべ、世間話と依頼の話を何とか混ぜ込みながら、話を長引かせる。
「ってことがあって」
「もういいかしら?私はやることがあるの」
女性は明らかに飽きたという顔をしている。ウィルはそろそろかと思うと、用意されていた台詞を言うことにする。
「長々とすみません。ああ、そう言えば伝言です。『依頼人の男性のことでお話があります。後で来てください』……アマネがそう言ってました。さっき」
「!!」
ウィルの言葉に、女性は目を見開く。
それもその筈だ。アマネはさっき自分が閉じ込めたのだ。そう簡単にロープも外せないはず。だが、ウィルは女性に『さっき』と言った。
(どういうこと?まさか、逃げ出したの?)
「どうかしました?」
ウィルは、あくまで女性の動揺に気付かないふりをする。
「え?……い、いいえ。何でもないわ。伝言わざわざありがとう。行ってみるわね」
明らかに声が震えている。が、ウィルはまた愛想笑いを浮かべると、女性に背を向けた。
(さて、そろそろ警部達が来る頃だな)
ウィルは物陰に隠れて、グロー警部達を待つ。すると、数人の警官を連れて、グロー警部がやって来た。
時刻はもうすぐ午後七時。ウィル達は息を潜めて女性の出方を待った。
七時二十分になった時、女性は慌てた様子で乱暴にドアを開けると、鍵も閉めずに走り出す。
「動いたな。……行くぞ!」
グロー警部の一声で、女性の尾行が開始された。
「……アマネに、何かあったのか?」
待ち合わせ場所にアマネの姿はなく、ウィルはホワイト・チャペル地区の表通りに戻って、アマネの情報を集めていた。
だが、アマネを見かけたという人物はいなかったため、途方にくれた。
そんな時、フランツがまた目の前に降ってきた。
「やぁ!」
「……帰れ」
「それは無いんじゃないかな?何か困っているんだろう?例えば……ミス・アマネのこととか」
完全に見破られ、ウィルは苦虫を噛み潰したような顔をする。だが、アマネが優先のため、ウィルはフランツに協力を頼むことにした。
「お前、宝探しは得意だよな?」
「まぁね」
「じゃ、アマネの居場所。探れるか?」
ウィルは、何となくアマネに何かあったと思った。
「うん、結構自信あるよ。探し物は好きだから」
「……本当は嫌だし、腹立つけど、俺の代わりにアマネを見つけてやってくれないか?」
「いいよ。その代わり、君も君で動いてくれるかな?」
フランツは、出来るだけ長く女性を足止めしてから、あることを言って、アマネの所に行かせろと言った。
その前に警察に連絡をいれ、女性を尾行してもらう必要があったため、先に警部に話をしに行ったが。
(ホントは、俺が真っ先にお前を助けに行きたかった)
けれども、こういうことは怪盗である彼が適任なのは事実だ。
ウィルは女性の住所が書いてある紙を見ながら、女性の家へと走っていく。
家に着くと明かりはなく、そこらじゅうから腐った生ゴミのような匂いがした。
貧民街にいた時、散々嗅いだ匂いと同じで、ウィルは顔をしかめる。
無人のようにも感じるが、人の気配はした。
ウィルはドアをノックする。
暫くすると、この家には不似合いなほど上等のドレスを着た依頼人の女性が出てきた。
「あら?貴方は……」
「探偵の助手です。……あの、アマネと会いませんでしたか?」
「……いいえ」
口元に笑みを浮かべる女性に、ウィルは内心嘘だと思った。
「探偵さんがどうかなさったの?」
「……いえ!ああ、貴方が探してる男性のことで、もう少し聞きたいことがありまして」
ウィルはとっさに愛想笑いを浮かべ、世間話と依頼の話を何とか混ぜ込みながら、話を長引かせる。
「ってことがあって」
「もういいかしら?私はやることがあるの」
女性は明らかに飽きたという顔をしている。ウィルはそろそろかと思うと、用意されていた台詞を言うことにする。
「長々とすみません。ああ、そう言えば伝言です。『依頼人の男性のことでお話があります。後で来てください』……アマネがそう言ってました。さっき」
「!!」
ウィルの言葉に、女性は目を見開く。
それもその筈だ。アマネはさっき自分が閉じ込めたのだ。そう簡単にロープも外せないはず。だが、ウィルは女性に『さっき』と言った。
(どういうこと?まさか、逃げ出したの?)
「どうかしました?」
ウィルは、あくまで女性の動揺に気付かないふりをする。
「え?……い、いいえ。何でもないわ。伝言わざわざありがとう。行ってみるわね」
明らかに声が震えている。が、ウィルはまた愛想笑いを浮かべると、女性に背を向けた。
(さて、そろそろ警部達が来る頃だな)
ウィルは物陰に隠れて、グロー警部達を待つ。すると、数人の警官を連れて、グロー警部がやって来た。
時刻はもうすぐ午後七時。ウィル達は息を潜めて女性の出方を待った。
七時二十分になった時、女性は慌てた様子で乱暴にドアを開けると、鍵も閉めずに走り出す。
「動いたな。……行くぞ!」
グロー警部の一声で、女性の尾行が開始された。