女探偵アマネの事件簿(下)
アマネとウィルの休日
バジル伯爵の誕生日パーティーから、一ヶ月後。あれから黒の貴公子の噂もなければ、難事件もない。
久々に訪れた退屈に、アマネはあれこれと食材をブレンドをしている。
「………」
「おい」
「………」
ザーっと小麦粉が滝のように落ち、その次にリンゴとバナナを乱雑に切って突っ込み、スプーンで適当にかき混ぜたらあら不思議。
「何これ?何この破壊兵器」
紫色のスープの出来上がりだった。逆に何をどうすれば紫色になるのかとツッコミたいが、ウィルはアマネの作った破壊兵器(スープ)?を速やかに処分する。
「おい、アマネ!」
「………日本では、立てば芍薬座れば牡丹、歩く姿は百合の花という言葉があるんです」
どことなく目が死んでるアマネの肩をウィルが掴むと、どこか遠くを見るような目でアマネは呟く。
「ああそう。で?」
「フランツはあれですね……立てばタケノコ座ればこんにゃく、歩く姿はトウモロコシですね」
「どうしたぁぁぁぁ!!マジて何があったんだよ!てかお前あいつに恨みでもあんの??」
今日はアマネの頭のネジが、緩んでるらしい。
(たまにはゆっくり休んだ方が良いよな)
このままでは、こっちまで可笑しくなりそうだ。
(……でもな、どこ行けばいいか)
目が疲れる所はなるべく避けたいところだ。となると、ゆっくり外の空気を吸って、風に当たれる所でピクニック位だろうか。
ふと、ウィルは思う。アマネが前に、影送りがどうのこうのと言っていた。
今日の空は、真っ青で気温も丁度良い。影送りにはうってつけだろう。
それに、弁当を用意してのんびりというのも中々良いと思う。暇をもて余しているのなら、大自然で発散するべきだ。
「アマネ。出掛けるぞ』
「桃源郷にですか?お一人でどうぞ」
「桃源郷ってなんだよ!意味は分かんねーけど、何となく悪口言われたのは分かったぞ。いいから、支度!」
渋々だが、支度をしに部屋に行ったアマネを見送り、ウィルは簡単にだがお弁当を用意する。
行くべき所はハイド・パーク公園。
(前二人で散歩したのは、ホントに小さな公園だったし。ジャックと会ったからな………………ジャックは)
あれから暫くした後、どうしても気になったウィルは、救貧院に行った。
だが、やはりジャックは三日と持たず亡くなっていた。
自分はたまたま運が良かっただけだった。救貧院から逃げ出し、愛情深い老人に拾われたのは、ホントに幸運としか言いようが無いだろう。
(あいつの人生はあいつにしか背負えない)
どんなに変わってやりたいと願っても。
ウィルは知らず、手に力を込めていた。すると、温かい温度が包み込む。
ウィルが横を見ると、アマネがそっと手を重ねていた。前にウィルがアマネにしたように。
「……アマネ?」
「支度終わりました。行きましょうか」
アマネはウィルから手を離し、小さく微笑む。
「ああ!」
溜まりかけた涙を乱暴に拭い、ウィルは笑った。
久々に訪れた退屈に、アマネはあれこれと食材をブレンドをしている。
「………」
「おい」
「………」
ザーっと小麦粉が滝のように落ち、その次にリンゴとバナナを乱雑に切って突っ込み、スプーンで適当にかき混ぜたらあら不思議。
「何これ?何この破壊兵器」
紫色のスープの出来上がりだった。逆に何をどうすれば紫色になるのかとツッコミたいが、ウィルはアマネの作った破壊兵器(スープ)?を速やかに処分する。
「おい、アマネ!」
「………日本では、立てば芍薬座れば牡丹、歩く姿は百合の花という言葉があるんです」
どことなく目が死んでるアマネの肩をウィルが掴むと、どこか遠くを見るような目でアマネは呟く。
「ああそう。で?」
「フランツはあれですね……立てばタケノコ座ればこんにゃく、歩く姿はトウモロコシですね」
「どうしたぁぁぁぁ!!マジて何があったんだよ!てかお前あいつに恨みでもあんの??」
今日はアマネの頭のネジが、緩んでるらしい。
(たまにはゆっくり休んだ方が良いよな)
このままでは、こっちまで可笑しくなりそうだ。
(……でもな、どこ行けばいいか)
目が疲れる所はなるべく避けたいところだ。となると、ゆっくり外の空気を吸って、風に当たれる所でピクニック位だろうか。
ふと、ウィルは思う。アマネが前に、影送りがどうのこうのと言っていた。
今日の空は、真っ青で気温も丁度良い。影送りにはうってつけだろう。
それに、弁当を用意してのんびりというのも中々良いと思う。暇をもて余しているのなら、大自然で発散するべきだ。
「アマネ。出掛けるぞ』
「桃源郷にですか?お一人でどうぞ」
「桃源郷ってなんだよ!意味は分かんねーけど、何となく悪口言われたのは分かったぞ。いいから、支度!」
渋々だが、支度をしに部屋に行ったアマネを見送り、ウィルは簡単にだがお弁当を用意する。
行くべき所はハイド・パーク公園。
(前二人で散歩したのは、ホントに小さな公園だったし。ジャックと会ったからな………………ジャックは)
あれから暫くした後、どうしても気になったウィルは、救貧院に行った。
だが、やはりジャックは三日と持たず亡くなっていた。
自分はたまたま運が良かっただけだった。救貧院から逃げ出し、愛情深い老人に拾われたのは、ホントに幸運としか言いようが無いだろう。
(あいつの人生はあいつにしか背負えない)
どんなに変わってやりたいと願っても。
ウィルは知らず、手に力を込めていた。すると、温かい温度が包み込む。
ウィルが横を見ると、アマネがそっと手を重ねていた。前にウィルがアマネにしたように。
「……アマネ?」
「支度終わりました。行きましょうか」
アマネはウィルから手を離し、小さく微笑む。
「ああ!」
溜まりかけた涙を乱暴に拭い、ウィルは笑った。