本当のワタシ
「……はい」

「なのにこんな暴走族なんかとつるんで…お前まで俺たちを裏切るのか?」


“お前まで”。咲夜のことを言っているんだろう。

咲夜は裏切ったんじゃない。

自立したんだ。


「…私は…」


続きの言葉がなかなか出てこなかった。

…出す勇気がなかった。


「大丈夫」


何も言えずにいたら、伊月がそっと手を握ってくれた。


それは背中を押されたような気がした。


「…私は、お父さんが期待するような人にはなりません。」
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