残念な死神
そんなに長く一緒にいた訳では無いが、藍斗は細川のことを理解したつもりでいた。
そんなわけない。
そんな簡単に把握される人間が死神なわけないじゃないか。
着々と話を進める細川を見やる。
きっとこの男にも面倒くさい事情があったろするのだろう。
藍斗は勝手に同情していた。
「死神としてやってはいけないこと。まぁ色々解釈はあるんスけどね」
人によって受け取り方が違うということか。
だとすると死神それぞれで仕事の仕方が変わってしまうのではないだろうか。
細川の言葉から、藍斗はそんな疑問をおぼえた。
「たしかに当人に言いに行くのはマズイっすね。そこら辺はトップシークレット並のことなんで、それこそ早めに知っちゃったら何するかわかんないんスよ」
「自暴自棄になったり?」
「まぁ...そんな感じッスね」
細川は目線を下げて困った顔をした。
これまで藍斗がどんなに細川を苦しめてもしなかった表情だった。
細川にも色々あると悟った藍斗の勘はなかなかに外れてはいないのだと思う。
「人には知るべきことと知らなくていいことがあるんスけどね。死期は後者です。オレ達が動けば排除できる障害もある」
細川の手に力が入った。
「でもそれはタブーっスから。どんな立場であっても、死期を変えてしまうのは死神としてあってはならないことっス。覚えておいてください」