メガネの奥の美人さん


ワイワイと盛り上がる中、お手洗いに
向かうと…ちょうど出てきたのが
例の後輩。


稲葉くん、お疲れ様。
だいぶ飲んだの?

あたしは、顔が赤くなるわりには、
お酒はわりと強いタイプ。

そんなあたしの顔を見て、

原さんこそ、
飲みすぎなんじゃないですか?
顔が赤いですよ。

と、しれっと言うもんだから。
…飲みの席でも、可愛くないっ。
つい、ムッとしたあたしは…。

ご心配ありがとう。
でも、大丈夫です。と、
素っ気なく言って、すれ違おうとした。

その時、暗くて見えなかった溝に
ヒールがひっかかり、
がくっと膝が折れるほど、よろけた。

そのあたしの体を、あの細い腕が
がしっと受け止め。

受け止められたことで、またよろけた
あたしの手が、稲葉君のメガネに当たり。

落ちて、カシャンと音を立てた…。


うわ。やば。壊れた??

慌ててしゃがみ、暗い照明の中、
手探りでメガネを探す。

ぼーっと、突っ立ってる後輩君に、
落としちゃって、ごめん。
暗いから、一緒に探してもらえる?
と、頼むと。


あ…俺、メガネ無いと全然見えないんで…
無理ですね。と。

あーそうなんだ…。

と、探っていた手にメガネが触れた。

あ、あった!と、メガネを拾って
立ち上がろうとした時、

え?と、振り向いた後輩君と、
顔がぶつかりそうになった。

わ!危ない…!!
…って言うか、今……唇触れた??

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