朧咲夜3-甦るは深き記憶の傷-【完】
4 敵、多過ぎでしょう。
side咲桜
「あー、咲桜だー」
玄関に入るなり抱きしめられて、たぶん今までだったら慌てていたんだろうけど、今日は違った。
「流夜くんだー」
声が震えないように頑張って、私からも流夜くんの背中に腕を廻した。
流夜くんの腕の中に置いてもらうと、ふっと力が抜ける。
気を張っていたのが緩んで、安心、という気持ちを知る。
家に帰ってから私は、流夜くんに連絡を取った。
逢いたい、と正直に言うのは……少し気恥ずかしくて、今日はご飯を食べに来ませんか、という言い方をした。
流夜くんはいつもよりは少し遅くなったけど、うちに来てくれた。
今日は夜々さんの牽制はなかったみたいで、玄関で迎えるなり抱き付かれた。
在義父さんがまだ帰ってなくてよかった……。知られたら絞め殺されているよ。