朧咲夜3-甦るは深き記憶の傷-【完】


「ごめんな、面倒になって」


「ううん。ここに来るのも無理してくれたんでしょ? ありがとう」


「咲桜に逢えるんだったら無理なことなんてない。……連絡、ありがと。こっちのことに巻き込んでしまったから、逢いに行きたいとは少し言い出しづらかったから」
 

流夜くんが苦笑した。


「……うん」
 

笑満の言う通りだった。
 

私の全部を包むほど、器の大きな人だったよ。


「とりあえず、この前中途半端にしてしまった話をしたいんだけど……」


「あ、そうだよね。あがって」
 

流夜くんの手を取って階段の方へ向かった。


「咲桜? 話だったらリビングで――」


「あ、えっと……私の部屋じゃダメ?」


「駄目」


「……一応片付けてあるよ?」


「猶更駄目だ。リビングだったら在義さんの牽制があるから」


なんかもそもそ言っている。
 

……在義父さんがいつ帰ってくるかわらかないから、尚更二人きりで話したいんだけど……。


空いている手を握った。


「……二人だけで話したいんですよ」


「………………わかった」
 


長い沈黙のあと、流夜くんは肯いてくれた。

< 101 / 308 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop