朧咲夜3-甦るは深き記憶の傷-【完】
side流夜
咲桜の部屋に入るのは二度目だ。最初は、見合い事件の日。
そのときも中までは入っていなかったから、入る、というのは今日が初だ。
なるべく中を見ないように、視界を床にせばめてみる。
「今日、在義さんは?」
念のため訊いておく。ストッパーは大事だ。
「いつも通りに遅くなるみたい」
それなら大丈夫か。
急に泊りになることもあるけど、今のところ帰ってくる予定ならば自制もかけやすい。
咲桜が小さなローテーブルにつき、手を握られたままだった俺も座る。
小花柄のラグが敷いてあった。