朧咲夜3-甦るは深き記憶の傷-【完】
咲桜ははっと息を呑んだ。手が離れる。
「……すまない。いきなり」
咲桜はまた少し顔を俯けて小さく首を横に振った。
「……自分の、話……」
「………」
「私と母さんのこと、ここの近所の人、知ってるから。母さんの身元がわからないこと、とか、……父親がわからない、こととか。……みんなが夜々さんみたいな人じゃない、から……」
どれほど俺を敵視しようと、俺に敵視されようと、朝間先生の存在は咲桜にとって特別なのだとわかっている。
……これは、その理由の一端か。
「……中でも、箏子師匠(ことこせんせい)は――……って! な、何言ってんだろ。ごめんね、降渡さんの話だったよね」
「咲桜。一つ言っておくぞ?」