朧咲夜3-甦るは深き記憶の傷-【完】
「……お前、桃子さんをなんだと思ってるんだ?」
「桃子母さん? 超可愛い人。友達になりたいタイプ」
真面目な顔で答えられた。こっちが困る。
「……恨んでたりしないのか?」
咲桜の根本のトラウマは桃子さんだから――今まで話が向かうのを、意図的に避けていたのだけど。
「恨み? ああ――うーん、恨んでは、いるんだけど」
いるのか。
「でも、桃子母さんが優しい人だったこととか、そういうことは本当だから。恨んでるのは、寿命より一秒早く死んでしまったことくらいかな」
「―――」
寿命より。
言葉にして、咲桜の瞳の灯りが一段落ちた。