朧咲夜3-甦るは深き記憶の傷-【完】
桜学――私立桜宮学園。
藤城や桜庭よりも規模の大きな、全国区の進学校だ。
Pクラスというのは、進学校にある特別クラスと同じようなものだ。
ただ、これは自薦他薦の試験ではなく、桜学の教師によってPクラスに配されるのだと聞く。
……実は流夜くん、そこの知り合いの先生からも桜学に来ないかと誘われているらしい。
「それで――降渡さんは一つ下の学年に入ったんですか?」
「そ」
「非難罵倒がすごかったよねー。僕と流夜までとばっちりだったし」
「すまんかった」
降渡さんが謝るけど、吹雪さんは特に意に介さない。
「気にしてないけど。遙音も桜学から誘いあったんでしょ?」
「そうなのっ? いや、遙音くんだったらあって当然か……」
「当然ではねーよ。言われても、神宮が藤城初任の年だったから、話蹴るの迷いはなかったけどな」
「さすがだねー」
笑満が先輩を見る目は尊敬の眼差しだ。
先輩は少し恥ずかしそうにそっぽを向いた。
……その様子から、笑満の気持ちは、先輩以外への周囲にはだだもれのようだった。
降渡さんと吹雪さんは楽しそうな顔をしている。