朧咲夜3-甦るは深き記憶の傷-【完】


「………」
 

少し悩んだ。


弁当の件、明日咲桜に話そうと思ったが……咲桜のことだから「なんで早く言わないの! 今日作ってきたのに!」とか怒られそうな気がしたので、メッセージを入れておいた。


時間としてはもう寝ているかもしれないけれど、咲桜に偽っておくのは気が落ちる。
 

――どうしてなのだろう。


咲桜や遙音に改めて問われれば、答えはなかった。


曖昧で感覚的な答えで二人とも引いてくれたけど――どうして自分は咲桜だったのだろう。


障害は大きすぎる相手なのに。


「………」
 

それでももう、諦めたり引き返したりする気なんてさらさらないのは、どうしてなんだろうか。
 

わかんね。それこそ咲桜にも問いたい。
 

……――どうして俺を選んでくれた……?

< 174 / 308 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop