朧咲夜3-甦るは深き記憶の傷-【完】
「……他の者だったらもっと早くにゆるされていましたか」
「他の野郎だったらぶん殴って蹴り出している。金輪際、咲桜に近づけさせもしないよ」
在義さん、笑顔で辛辣に言い放った。蹴り……。
「………」
自分、自分でよかった……。己に感謝しつつ、冷や汗が出る。
「なんでだろうね――君なら咲桜のことも任せられると思うのに、なかなか心が落ち着いてくれない。……男親の悲哀とかいうやつなのかなあ」
「……吹雪や降渡でしたら、同じようにゆるされていた気がしますが」
「まさか。それはないよ。君が一番に知っているだろう――あの子たちの恋い得る人は揺らがない。だからこそ、春芽くんが選んだのは君だったんだろう」
「………」
確かに、あいつらの恋人とすきな人。一ミリも揺らいじゃいない。
「……三年だ。咲桜が生徒である時間はまだ三年もある。それでも君は咲桜を望むのか?」
「はい」
――今は、俺にも揺らぎようがなかった。
それを聞いて、在義さんは安堵か諦めか判別のつかない顔をした。
「……愛子の勝ちか」