朧咲夜3-甦るは深き記憶の傷-【完】


敬語で話してみる。まさか誰かに――宮寺先生以外の人だって――聞かれていた場合の逃げ道だ。


「いい。話があるから、乗れ」


「………」
 

怒っている。


……メッセージを見ているのだろうけど、それで余計怒ったか。


うーあー、と心の中は必死にうなる。
 

逃げ場なく助手席に座った。流


夜くんは黙って車を発進させる。


無言の車内。流夜くんと一緒にいて――私事をしていないとき――言葉がないのは珍しい。


いつだって流夜くんは、仕事が立て込んでいるときだって、暇を見つけては構ってくれた。


……そんな時間を、失いたくない。


「………」
 

って! てかてか! 頭沸く! 心臓沸く! ちょ、心臓音聞こえてない⁉

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