朧咲夜3-甦るは深き記憶の傷-【完】
心は轟々(ごうごう)とたぎっている。
でもそれはきっと、自分だけだ。
もし流夜くんが今、嫌な思いをしているとしたら、怒っているとしたら、原因は一つだ。
現実。
呼吸を。一度大きく吸う。
目を、流夜くんから逸らして前に向けた。
「……宮寺先生と、話した」
「………」
「父さんの娘だって知って、話したかったって言われた」
「……そうか」
「うん。それだけだった」
よかった。
思ったよりは流夜くんに対して錯乱した話し口調にはならなかった。
頭の中では、ギャーッ! 少しかすれた声も素敵です! となっているけど。
最早錯乱している私だけど。