朧咲夜3-甦るは深き記憶の傷-【完】
「は? 違うのか?」
「うん。宮寺先生が父さんを知ってるなら、同じく面識のある流夜くんと、私も父さんを通じて知っていたって設定にするのはどうかな? て言おうとしただけ」
この案は笑満からの提案だ。
在義父さんという、『咲桜の父』を介しての知り合いでもあるならば、そこから付け入られる可能性もないか、という。
しかしそれは、体裁、にもなるんじゃない? と電話で言われた。
「………」
流夜くんははやとちりしてしまったみたいだね。
ちょうど赤信号になって、流夜くんはハンドルに額を押し付けた。
「……少し待ってくれ」
「? うん」
少し待った。元より赤信号だから待つしかないのだけど。