朧咲夜3-甦るは深き記憶の傷-【完】


「あの……」


「すまない。咲桜は本当に考慮すべきことを考えてくれているのに……」


「え? 怒ってるんじゃないの?」


「怒ってるよ。でもそれは宮寺に対して」


「い、いや、宮寺先生は父さんのこと話しただけだって。本当に」


「わかってるよ。学生時代から、俺らと同じように、あいつも在義さんを慕ってるって。だから咲桜とも話したくなったって。わかってんだけど――でも、それ以前に咲桜は俺の女だろ? 人のもんにコナかけやがってあの野郎……!」
 

怒っていた。――怒って、いた? 私に、ではなく、宮寺先生に?
 

流夜くんの言い分が上手く理解出来ずにいると、流夜くんは細く息を吐いた。


「わかってる。講師に来てる奴に呼ばれて、上手い逃げ方なんてそうないよな。しかも周りに人がいて、止められたりしなかったら断りにくいよな。だから俺が怒ってんのは宮寺に対して。学内で堂々咲桜と二人っきりとかふざけんなあのボケ」


「………」
 

それは、もしかして、宮寺先生を羨ましいとか、思ってくれた?

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