朧咲夜3-甦るは深き記憶の傷-【完】
笑満に顔を向けると、ぽんと肩を叩かれた。
「まー……ね。目立たないようにしてるってだけで、生徒から嫌われるようなことしてないし。授業はわかりやすいし、話せば優しいし」
「………」
そう……なの? いや、そうだけど。
フォローになっていない笑満のフォローに、言葉を失ってしまう。
流夜くんは優しい。
吹雪さんや降渡さんには、『咲桜には甘すぎる』と爆笑されながらからかわれるほど大事にしてくれる。
でも、学校での『神宮先生』だって、流夜くんがわざと目立たないように振る舞っているけれど、根本が同じなのだからやはり優しさはにじみ出るんだろう。
……隣の笑満の表情の意味ははかりかねるけど。
恋愛感情を、神宮先生――流夜くんに対して抱いている生徒もいるということだろうか。
――わけのわからない不安が胸に落ちてしまった。