朧咲夜3-甦るは深き記憶の傷-【完】
流夜くんが、学生時代に恋人の数が多かったことは聞いている。
その人たちに嫉妬をしたのも事実。
でも、『恋愛感情を持ったのは咲桜だけだ』と宣言してくれたから、不安になることはなかった。
……今は違う。
現在進行形で、流夜くんを想っている――かもしれない人がいる。すぐそばに。
「さおー。大丈夫だよ。あの人は生徒に付け入られる隙なんて見せない」
いつの間に起きたのか、頼が腕に顎を載せてこちらを見上げていた。
「………」
「あの人の本性も知らないですきなんて言ってる人、気にするに値しないよ」
バッサリだった。
……流夜くんの本性を知らないのは仕方ない。本人が隠しているのだから。
でも、私だって知らなかった。私が惹かれたのは素の流夜くんだった。
あの子は?
もし何らかの事情で流夜くんの素顔を知ってしまったら? ……自分みたいに、もっとすきになってしまうかもしれない。
頼に返事が出来ないでいると、小さくため息が聞こえた。
「咲桜。この言い方は怒られるかもしれないけど、学校でのあの人は偽モノだよ」
「―――」
はっとした。
にせもの。