朧咲夜3-甦るは深き記憶の傷-【完】
「――それだけだから。藤城に来た理由がお姉さんのことなら納得だ。藤城は桜庭とは違った方向に人脈あるからな。……それに関してだけは、早く見つかることを願っているよ」
そう言って、席を立ってしまった。
龍さんに何か声をかけて、そのまま出て行く。
俺、落ち込んだまま。
「何やっての、お前」
「相変わらず琉奏には弱いよねー」
はっとすると、意識の端と端におなじみの顔があった。
「お前ら……」
「ちょ、泣きそうになるなよ。吹雪、ハンカチ貸してやって」
吹雪がポケットから出したハンカチを、しょげている俺は素直に受け取った。
「はいはい。まったく流夜はひねくれ過ぎてるから琉奏に弱いのかな。まあ、あそこまで真っ直ぐなのも天然記念物だけどさ。流夜、今まで琉奏だけは言いくるめられなかったもんねー」