朧咲夜3-甦るは深き記憶の傷-【完】
「在義はお前に甘いですからね。問題が起こってからでは遅いのです。事前に防ぎなさい」
「………はい」
かしこまって、小さな声で返事をする。
「わかっているならいいのです。それでは、わたくしはこれで」
さっと着物の端を揃えて、箏子師匠は立ち上がる。
習慣で、玄関まで見送るために遅れてあとをついた。
下駄を履く前に、ふと箏子師匠が私を見上げて来た。
「しかしお前は大きくなりましたねえ……」
「え、そうですか?」
最近、流夜くんや降渡さんや、背の高い人が周りにいることが多いから失念していたけど、私は同年代女子に比べて背が高い方だった。
学年でも一番高いし。
すぐに箏子師匠は正面に向いた。