朧咲夜3-甦るは深き記憶の傷-【完】


流夜くんほど生きていないから、私はまだキライだ。


流夜くんほどの人と出逢えたのに、まだキライだ。


恋人で、大すきな人で、愛してると言ってくれる人で、愛していると言える人がいても。
 

私はこの世界が大っ嫌いだった。
 

この世界にしか、流夜くんはいないのに。
 

ここにいなかったら、出逢えていなかったのに。


本当に? 流夜くんは言ってくれた。


在義父さんの娘でなくても、自分は咲桜のことをすきになっていたと。


私だって。


私だって、流夜くんがずーっと先生という対象でも、すきになっていた。


そう言いきれる自信、あるよ。
 

なんとなく感じる、波の存在。


「……流夜くんすきなおまけに」
 

おまけでもいいから、この世界を、すきになりたいと思った。
 

流夜くんがいて初めて、桜の花を綺麗だと思えたから。
 

こうやって――その腕に抱き留めてくれる存在のありがたさを、噛みしめながら。

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