朧咲夜3-甦るは深き記憶の傷-【完】
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「神宮先生―っ」
また、はっとした。
同じ声――だ。
流夜くんが廊下を向かい側から歩いて来たのは気づいていたけど、今までそう親しくもなかった先生に飛びつくのも変に思われるかと思って学内では必要以上に近づいてはいなかった。
一緒に廊下にいた笑満の顔も、私と同じことに気づいたと言っている。
流夜くんは――『神宮先生』は立ち止まって丁寧に答えている。
さっき感じた焦燥感が――今は薄い。
完全にないわけではないけど、それよりも自分を大事にしてくれる、大事だと言ってくれる流夜くんに心を寄せればいい。
……学校での流夜くんだって、実は大すきだけど。
偽モノでも、それが流夜くんなら大すきだった。
「あっ! 宮寺(ぐうじ)先生!」
ぐうじ?
聞き覚えのない名前。
声は、流夜くんのところにいる女子生徒からだった。
その先を見ると、若い男の人――流夜くんと同年くらいかな?――が、いた。
藤城の教師には聞いたことのない名前……笑満に顔を向けると、