朧咲夜3-甦るは深き記憶の傷-【完】


「…………」
 

そう返せないのが、今の自分の位置だ。


生徒というしばりの。


……でも。


「すきですよ。ずっと、絶対」


「――え」
 

顔をあげた宮寺先生と目が合った。


「えっ! ご、ごめん! そうだよね、別にすきになっちゃいけないとかないよね、だからあの――泣き止んでください!」
 

懇願された。……泣き?
 

頬に触ってみると、涙がまとわりついてきた。な、何故泣く! 自分!
 

焦って困って顔をこすっていると、隣で宮寺先生も困っていた。


「すみません、なんか踏み込んだこと訊いちゃって……。教師と付き合う、とかはないけど、すきでいるくらいは気持ちの問題だよね。……――ただ、あの


「そこまで、宮寺」
 

ふっと、視界が昏くなった。


雲? 違う。隙間から太陽の光を見せているのは、大きな手だった。


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