朧咲夜3-甦るは深き記憶の傷-【完】


「え―――」


「じんぐ――――」


「もうそこまでにしてやってくれないか。こんなに泣かせて」


「う……悪い。華取さんも、ごめん」


「い、いいえ――」


「少し、耳をふさいでいてもらえるか?」
 

そう言った流夜くんの顔と声が、『神宮先生』でなく『流夜くん』のもので、驚いてしまった。


学校で――しかも宮寺先生がいる目の前で、生徒にそんな態度をとっていいの?
 

困惑している間に、流夜くんがそっと後ろから私の耳に手をあてた。


直接は触れていないから、完全に音が聞こえないわけではない。


「神宮? 華取さんに何して


「自分の女泣かされて見過ごす馬鹿がいるか、阿呆」

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