朧咲夜3-甦るは深き記憶の傷-【完】
高校の頃、俺の傍らには大体女子がいた。
そのタイプはバラバラで、本当に見境がないと思われていたのも知っている。
ただそれは自分から望んだ『彼女』というものではなく。
あの頃護りたかったものは、体面上の『彼女』ではなく、『幼馴染』だった。
ヘンな噂ばらまかれて、吹雪や降渡まで巻き込みかけたのに嫌気がさして、それ以来告白を断らなくなった。
だから、二股にはならないようにだけはして、あとは相手の思うようにさせておいた。
そうすれば、学問以外興味のない俺に、『彼女』のことも見ようとしない自分に、相手は興味をなくして離れて行った。
それがたくさん繰り返された。
過去にあった事実はそれだけだ。
「………ほんとか?」
宮寺の声は胡乱に誰何(すいか)している。
「事実だ。絆のときは、少々俺も対応を間違えた。絆を、降渡に言い寄ってくるほかの女子同様に捉えてしまった。だから、追い払おうとした。……降渡にばれてぶん殴られて絆にも謝った」
宮寺は十秒ほど黙った。
そして半眼で口を開いた。
「……………いくら春芽たち巻き込まないためつったって、お前最低だろ。絆先輩のことは軽率に変わりないじゃねえか」