朧咲夜3-甦るは深き記憶の傷-【完】


「おかえりなさい!」


「わっ、……ごめんな、待たせて」
 

ドアを開けると咲桜が飛びついてきた。


少し驚いてしまったけど、柔らかい髪が胸元に寄るのが嬉しい。
 

………。


「咲桜、やたらに出てきたら危ないだろう。ここだったら遙音や日義が来るかもしれない」
 

まさか自分だと思って抱き付かれたら、相手をぶっ飛ばさないと気が済まない。


仮にも生徒だけど。


「え? 足音で誰だかわかるよ?」


「………」
 

そう言えばこの子、耳がすごくいいんだった……。


「じゃあ昨日もわかってたのか?」

 
華取の家を訪れたとき、すぐに飛び出て来たけど――


「あれは玄関でスタンバってました」
 

外にいると怒られるからー、と照れ照れという咲桜。


「いや部屋にいろよ。風邪ひくだろ」


「すぐに逢いたかったので」


「………」
 

なんだこの可愛い生物は。


ぎゅーっと抱きしめると、咲桜がわたわたした。

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