朧咲夜3-甦るは深き記憶の傷-【完】


「き、昨日って言えば――なんか疲れてたよね? いつもよりお仕事多かったの?」
 

勿論、『教師』の仕事ではない方を咲桜は指している。


「いや――まあ、俺の領分外なことなんだけど、ちょっとやらなくちゃいけないことが出来て。と言うか押し付けられて」


「そうなの? ……大丈夫?」


「問題ないわけじゃないけど、そちら側の頼り手もいるからな。大丈夫」


「………」
 

少しでも咲桜に触れていたくて、右手を絡め取る。咲桜が顔を俯けた。

 
恥ずかしさもあるのだろうけど、見える口元がそうではなかった。


「何か気になることあるか?」


「え、と……訊いてもいいの?」


「ああ。事件関係上喋れないことは、ちゃんとそうだって言うから。今は、どうしたんだ?」
 

咲桜は、すうと軽く息を吸い込んだ。決心するみたいに。


「……頼り手、の方が……羨ましいなあ、と」


「……相手側、仕事押し付けられるだけだぞ?」

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